春の旅鳥

 シギ・チドリ類の多くは日本の遥か南の暖かな国で冬を過ごし、夏は日本よりも涼しい北の国で過ごします。超長距離の渡りで、コース途中に位置する日本には、春と秋に姿を見せることになります。夏に来るツバメなどを“夏鳥”、冬に来るカモなどを“冬鳥”と呼びますが、シギやチドリは“春鳥”や“秋鳥”ではなく、“旅鳥”と呼びます。

 春の選抜高校野球大会で甲子園球場に歓声がこだまする頃になると、甲子園浜や香櫨園浜の干潟に姿を見せ始め、ゴールデンウィーク頃に最盛期となります。からだの色や模様が地味で判別しにくい仲間ですが、嘴の形が多様で、行動も個性があって、観察すると面白い仲間です。干潟が現れている時間帯だけでの観察になるので、新聞やネットなどで干潮時刻を確認して、1時間ほど前に到着できるように出かけるのが良いでしょう。


シロチドリ

シロチドリ
シロチドリ

 体長約17cm。首に架かる帯が胸のあたりで途切れています。オスは、その帯が黒色で、頭は茶色。額に黒斑があります。写真はメスで、頭、過眼線、首の帯などは淡い茶褐色です。一部は越冬します。

コチドリ

コチドリ
コチドリ

 体長約15cm。首に架かる帯は途切れることなく繋がっています。ネックレスですね。写真はオスで、その帯は黒色で、過眼線も黒い。眼の縁が黄色である。シロチドリより少し小柄。

メダイチドリ

メダイチドリ
メダイチドリ

 体長約20cm。写真はオスで、胸部が橙色で、黒色の過眼線が特徴である。メスは、胸の橙色部が狭く、過眼線は灰褐色。シロチドリより少し大柄。



ダイゼン

ダイゼン
ダイゼン

 体長約30cm。チドリの仲間では大型である。夏に近づくと、首から胸・腹にかけて黒色になる。雌雄は、同色同形で外観では判別できません。

トウネン

トウネン
トウネン

 全長約15cm。シギでは最も小型で、漢字では「当年」です。「その年生まれ(0才)」の意で、小柄であることを表していますが、何才になっても「当年」です。

キョウジョシギ

キョウジョシギ
キョウジョシギ

 嘴がまっすぐなシギです。全長約22cm。黒・茶・白色が明瞭で、地味な種類が多い中では派手です。漢字表記は、舞妓をイメージして“京女鴫”と。



オオソリハシシギ

オオソリハシシギ
オオソリハシシギ

 嘴が上に反っているシギ。全長(仰向き時の嘴先端から尾端までの長さ)約40cm。写真はオスで、夏が近づくと顔から首、腹が赤褐色になる。嘴の反りはあまり強くありません。嘴の長さと頭長の比は、およそ2:1。

キアシシギ

キアシシギ
キアシシギ

 全長約25cm。名前は、脚が黄色であることに由来する。岸辺近くによく近づくので見つけやすいです。

チュウシャクシギ

チュウシャクシギ
チュウシャクシギ

 全長約45cm。甲子園浜や香櫨園浜では、数は多くはないが普通に見られます。嘴の長さと頭長の比は、およそ2:1。カニを捕らえると、嘴を振り回し、水面や干潟に打ち付けて足を外し、飲み込みやすくする行動が見られます。



イソシギ

イソシギ
イソシギ

 全長約20cm。漢字では「磯鴫」であるが、水田、河原など磯以外にも広く見られます。腹面の白色部が胸部側面の肩にまで深く食い込んでいるのが特徴で、脚は黄色。

ハマシギ

ハマシギ
ハマシギ

 全長約20cm。飛来数が最も多く、西宮で越冬する個体もいる。しばしば集団で飛翔し、旋回を繰り返す時の光景は美しいです。嘴は長めで、先端がわずかに下側に曲がっている。夏になると、腹面が黒くなります。

ホウロクシギ

ホウロクシギ
ホウロクシギ

全長約60cm。大型でとても長い嘴が下に大きく曲がっています。ダイシャクシギに似ていますが、本種の方は腹部に褐色味がある。嘴の長さと頭長の比は、およそ4:1。名前にあるホウロクは、豆を炒る器具の「焙烙(ほうろく)」に由来するとのこと。